「あなた」へ、生きてください ~『鬼滅の刃』最終巻の最終8ページ

今日12月4日、『鬼滅の刃』最終巻である23巻が出たので、さっそくKindleで買って読んでみた。


僕が若い頃は「ネタバレ」なんて言葉はなく、批評家たちは映画の結末を普通に細かく解説し、僕はラジオでそうした解説を毎週聞いていた。


特に淀川長治さんは最初から最後まで細かく解説し、僕はそれを聞いて、たとえばその頃はレンタルビデオもない時代だったためいつ再上映があるかもわからなかった『2001年宇宙の旅』などを見る前から全部知っていた。


その、淀チョーさんの語りと現実のキューブリックの作品世界があってこその、「映画」だった。


だから『鬼滅の刃』最終巻も全部説明したいのだが、現代ではなんとなくマナー違反だろうと思うので、最後のほうに出てきた一つのコマだけ紹介しておく。


その一コマは、下のようなもので、主人公の1人である竈門禰豆子(かまどねずこ)のつぶやきだ。


『鬼滅の刃』23巻p229より

23巻は物語完結後、主要登場人物たちが「あなた」に向けて語りかける8ページが繰り広げられて終わる。


その8ページでは、主要人物たちが「あなた」に向けてエールを送り続ける。


なんのエールかというと、引用コマにもあるような「生きること」「生まれてきたこと」「現在あなたがあなたであること」に対するエール、応援だ。


それを、死んでいったキャラクターも含む若い主要人物たちが笑顔とともに語りかける。


精一杯、生きてください、


と。


この最後の詩のような8ページを通過して初めて、陰惨な描写も多数含んだこの『鬼滅の刃』が、現在を生きる人々、特に『ジャンプ』を読む若い人たちに向けた「生きよう」というメッセージを底流に含んだ物語だったと我々は気づく。


それは、「友情・努力・勝利」というジャンプ3大原則をどこかではみ出した、子どもと若者たちに対するメッセージだ。友情や努力も大事だが、その前に


「生きてください」


がある。生きてください。ありのままの「あなた」でいてくださいという哲学的メッセージを死んだキャラも含む若い人物たちのメッセージとして伝えようてしている。


ジャンプが提示するジャンプ性をはみ出た、作者が子どもや若者たちにどうしても伝えておきたかった応援メッセージがここにある。


これは、子ども若者支援者のベテランでもある僕からみても、見事な子どもと若者へのエールだと思う。


多数の読者がこの最後の8ページを読むことを僕は願います。