「おとなNPO」〜劣化を越える強度

 

■その前に、「おしゃれNPO」とは

「劣化したNPO」という概念の対極として「おとなNPO」があるのでは、と先日僕は思いついた。

何気なくそれをFacebookタイムラインにメモってみたのだが、予想外にその日中に何人かの方から質問があった。

劣化した「おしゃれNPO」を超えるものとして「おとなNPO」があるのなら、それはどういうものなんですか? と。

僕の仕事は具体像を構築することではなく(NPO代表としては一応それらしいことはするが)、どちらかというとコンセプト、つまり「概念」を提案することだと自覚しているので、この「おとなNPO」という概念の強度をあげていくことが重要だと思っている。

おとなNPOは、まずは「おしゃれNPO」の対極にある。

「おしゃれNPO」とは、

1.ミッションが紋切り型、
2.リーダーに基礎知識が少ない、が、プライドは高い、
3.リーダーは社会正義を意識する大学生を主な労働者予備軍としてイメージしている、
4.大学生や若手スタッフはそんなリーダーに憧れている、
5.リーダーも大学生もジェンダーバイアスをもつあるいは利用する(若手女性スタッフを法人イメージとして積極登用する)
6.リーダーは紋切り主義アメリカ的経営論に浸かり、経営規模も小規模事業所の最大規模あるいは中小企業の小さめの規模である(50〜100人)、
7.そのため、論者によっては「ソーシャルベンチャー」と括るほうがわかりやすいと指摘する、
8.アドボカシーを権力に擦り寄ることだと認識している(弱者の代弁とは認識していない)、
9.リーダーもスタッフも主として中流階層出身である、あるいは下流層の「上部」出身である、
10.リーダーは下流層上部あるいは中流層での努力体験が考え方の根拠となっているため、下流層下部(貧困コア層)への想像力が欠けがちになる、
11.貧困支援をその他支援(たとえば災害支援)と混同してしまい、富裕エリアで貧困支援することに戸惑いがない、
12.リーダーもスタッフも基本的に「善意の人々」である、上の考えは無意識的レベルでの行いだ、
13.これは特定のNPOを指さず、21世紀前半の日本でのソーシャルセクター業界での「一般問題」となっている、

等々で表すことができるだろう。細かい論拠は当ブログのアーカイブを辿っていただければ、項目によっては詳述している。

■「おとなNPO」の強度を上げる〜ブラウン運動のように

そのようなおしゃれNPOこそがまさに「劣化する支援」のコアなのであるが、同時にここを乗り越えることがNPO2.0にもつながっていくだろう。

それを集約したコンセプトが「おとなNPO」だというわけだが、今のところは、概念といっても、下のような個人的ふるまいとしてしか僕には表現できない。

組織規模としては小さい(常勤スタッフ3名以内)ものをイメージするので、個人的ふるまいはスタッフ全員に共通することが望ましいが、少なくともリーダーは下のようであってほしい。

1.自分の弱さと快楽を知っている、
2.社会の最も潜在的な位置にいる人々に配慮しようとしている、
3. 社会が残酷なことを知っている、
4.それらを裏付ける理論と教養は幅広くもつ、
5.孤独を好みつつ他者に囲まれているものの、他者に甘えない、
6.プライドが低い、
7.チャラチャラしつつも笑いに包まれている、
8.ポリティカル・コレクトネスが教条的にならないよう、自分を常に監視する、
9.ミッションが具体的で明確、
10.マイノリティ当事者もスタッフに含まれる(マイノリティとマジョリティの境界が曖昧)、
11.差別したくない、しない、

これらはまだ、個人のふるまいや組織としての最低条件内にあるものばかりだ。ここから強度を上げていくことがポイントとなる。

組織規模としては上述の通り常勤3名まで、非常勤入れても10名までのサイズとなる。当然売上規模も小規模事業体コア(1〜2,000万円)レベルだ。

が、事業によっては積極的に他組織と連携していく。

それは従来のNPOたちがいう「協働」的な甘くはありながらもどこか排他的(おしゃれNPOを選別する)ものではなく、気体のブラウン運動のように衝突したり離れたりしながら、外から見るとまるで「群れ」のような動きをしつつ、結果としてそれぞれのミッションが数年単位で前に進む動きだ。

組織間も「頭部」はつくらず、「根」が絡まるようにしてそれぞれの要素が出たり隠れたりする。

組織内にリーダーは存在してしまうものの、リーダーは上の1〜11を貫徹しようとしているため、求心力は低い。が、根が絡むようにして組織自体はいつの間にか強くなる。

組織内の意志のすり合わせは、会議はほぼ行なわず、Facebookメッセンジャー的ツールを細かく組み合わせて細かいズレは捨象する。人の弱さと快楽が時間の流れの中でそのズレを埋め合わせると信じる。

意外に、別の文脈で思考してきた、あの「変なおとな」もここに入れ込んでもいいのかもしれない。変なおとなの集合体が、おとなNPOになると言ってもいいのかもしれない。


※2018.3月Google記事より修正、改題