スモールステップ支援のチャート式最新まとめ 〈支援の最前線〉9

今日から実家の香川へプチ療養に帰るので、1日早めの更新をしておこう。

昨日、プラッツで全体スタッフ会議があり、そこでI統括リーダーが上手に当法人の支援スタンスを説明してくれた。僕が説明するともっと硬くなってしまう。わかりやすいなあと思いながら聞いていたのだが、いわばその「元ネタ」は僕だから、ここであらためて「チャート式」的に整理しておこう。なお、元ネタの元ネタ(直接の元ネタではないが重要なヒントをいただいた方々)は、某H政大のH先生だったり、この前当ブログにも登場した某こころのKセンター元ワーカーさんだったり、何人かの僕の尊敬する方々である。
何人もの現場経験と研究知見があって初めてこのような「チャート式」は完成する。わかりやすさの影には、膨大な汗と真剣さが隠れている。また、以下は、厚労省のガイドラインともそれほど齟齬はなく、混乱は与えないはずだ。

すべては「スモールステップ」形式で記される。
★まずは、若者の「生活の状態像」から。
1.親子断絶型ひきこもり

2.外出不可型ひきこもり

3.外出可能型ひきこもり

4.心理面談型ニート

5.就労面談型ニート

6.短期「就労実習」型ニート(例.淡路プラッツの「トライアルジョブ」1回2時間×8日)

7.長期「就労実習」型ニート(職業訓練校含む)

8. 短期非正規雇用型ニート

9.長期非正規雇用型ニート(8と9について、ニートは働けない人なので矛盾表現だが、挫折した場合容易にニートに戻るためこのように表現する)

10.正規雇用
ちなみに、三年前に出した『ひきこもりから家族を考える〜動き出すことに意味がある』(岩波ブックレット739)では、これほど細分化されておらずもう少し大雑把だった。


★若者それぞれの「背景」もここに加わる。
a.精神障害
統合失調症、双極性感情障害(躁鬱病)、強度の強迫障害等。統合失調症の「陰性」にひきこもりが含まれていることもある。また、cの発達障害が背景の背景にある場合もある。
b.性格の傾向
ひきこもり的性格。内向的、繊細、プライドが高い、打たれ弱い等。これは非常に曖昧な定義であるため、専門家によっては、精神障害と発達障害に二分化してしまう人もいるだろう。
c.発達障害
現在もっともトレンドな話題。広汎性発達障害、ADHD、軽度の知的障害等。現在、広汎性発達障害にアスペルガー症候群と高機能自閉症をどのように統合するかということが議論になっているとのこと。だがそれは専門家の「名づけ」の問題であり、精神医学や臨床心理学そのものの特徴だ。
支援現場では、個々の特徴(無口、空気が読めない、暴力的等)を見据えた上で、ポジティブな面を引き出しネガティブな面をゆっくり変化させるということに長期的に取り組むということにつきる。そのために有効な福祉資源も使用する(このときネットワークは必須)。
診断名ははじめは必要だが、長い間支援していると、いい意味でその診断名に関係者全員(当事者含む)「飽きて」くる。それよりも、「いま」、「もうちょっと楽になることができて」、「もうちょとお得な」、具体的支援と情報がほしいという議論に移ってくる。こうなれば、支援は支援としてそれなりの軌道を進んでいる。
a〜cの背景を知りながら、1〜10のスモールステップをゆっくり進んでいく。三歩進んで二歩下がるは当たり前。そのために、支援者との面談(でのフォロー)がある。支援の過程の中で、福祉システムを使用したほうが幸福になれると関係者(当事者含む)が判断した場合、障害者に「なる」。障害者に「なった」としても、三歩進んで二歩下がるのペースで進んでいく。


★支援サイドからは、以下の三段階がある。
A.アウトリーチ支援
上の生活の状態の、1〜3が主な対象。保護者面談が中心。場合によっては訪問支援も。
B.生活体験支援
上の、4が対象。NPO等での、会話・ゲームに始まり、料理・清掃等の日常生活体験、スポーツ・外出等のレクリェーション体験をスモールステップで体験していく。
この段階は見えにくい支援ではあるが、この段階を経なければCでの支援が根付きにくい。その意味では最重要。従来、この段階が理論化されていなかった。
C.就労体験支援
 上の、5〜9が対象。ちなみに、多くのサポートステーションではAとCしかないため支援が定着しない。成功しているサポステは何らかの形でBをとりいれている。

★ここに、以下の二種類の支援のタイプが含まれている。
◯通所型支援
地域若者サポートステーションやNPO等。
◯宿泊型支援
いわゆる「若者自立塾」(民主党に「いらない」と言われて現在名称変更し事業継続中)やNPO等。
良心的な宿泊型支援は、効果抜群である。スモールステップの4〜10が、通所型支援の10倍のスピードで進むと言っても過言ではない。
しかし、技量のある良心的な宿泊型支援はまだ残念ながら数が少ない。そうなると、やはり通所型支援が若者支援の中心になるのだが、上に書いたとおり、「生活体験支援」の重要さがまだメジャーになっていないため、通所型支援は自立成功率が低い。
ちなみに、淡路プラッツが新たに今年度大阪府の補助金事業として行なう「ひきこもり青少年支援事業」(茨木市に「居場所」を新設する)は、この「生活体験支援」の重要さと、ネットワークの重要さを行政レベルで示し、より広く他行政にも知ってもらうことも目的の一つだ。7月にはホームページに掲載してく予定。

以上、若者の生活の状態、若者の背景、支援の三段階、支援のタイプをすべて含めて、「ひきこもりスモールステップ支援」と僕は名づけている。

以前であれば以上のようなことは本になるまでまとめることはしなかったが、大きな病気をした僕は、今自分ができることを自分のペースで今することにしたので、さらっとまとめておくことにした。スモールステップ支援については、これからも随時更新されていくことだろう。★