コア社員、専門社員、支援社員 〈経営〉

昨日から淡路プラッツは比較的長めの夏休みに入った。いまだ週4勤務の身とはいえ、勤務日の中身はかなり調整してはいるが少しハードになってきたから、ちょうどいいタイミングだ。夏休みは16日まであり、この間、実家の四国にも帰省しようと思っている。
昨日から数日は、大阪の自宅で一人のんびり過ごす予定だ。こういう時は僕は読書以外したいことがないので(いつもの新聞と週刊誌チェックは継続しつつ)、さっそく近所の紀伊国屋へ行ってみた。

夏休みといえば小説、そしてミステリー! と相場は決まっているので、さっそくミステリーコーナーへ。で、店員さんがいろいろ工夫して並べてくれている小説群を吟味してみるが……、うーん、残念ながらダメだった。ピンとくるものがない。いずれも、よく書かれているのはわかっているのだけど、イマイチ白けた僕がいる。たぶんこれは、去年一度、僕が脳出血で死の寸前まで行ったからだろう。「エンタメとしての死」はそれほど抵抗感はないのだが、「客観的出来事としての死」(自分には当分やってこないだろうという前提のもとでの死の描き方)は、読んでても全然ピンとこない。
死は、いつも我々にその可能性のドアを開いている。デリダをわざわざ持ちだす必要もなく、死があるから生が成り立つ。死と生は二項対立するものではなく、死という(無でもあの世でも異次元でも何でもいいが)土台の上に、生という現象は人間の場合は70〜80年くらい現れる。
そんな感覚が当たり前になってしまった僕としては、今は、死を客観的出来事として捉えるミステリーはつまらない。

んなわけで、結局買ったのは、『人事部は見ている』(楠木新/日経プレミアシリーズ)。うーん、休みの時も仕事かよ、と言われてしまえばそれまでなのだが、最近は、ずっと遠ざけてきたこうした経営入門書みたいなのが軽く読めてしまう。
今回は書評する気はないから中身はスルーするとして、本書の最後半に出てきた、これからの会社は、「コア社員」「専門社員」「支援社員」の三段階に分かれる、という予測に少し興味を惹かれた。このような区分、最近の経営書には時々見られ、すでにこれは常識となっており、僕が(青少年支援のプロであっても)経営の素人だから単に感心しているだけなのかもしれない。だが、本書は今年の6月出版で「たちまち5万部!」というオビもついているから、それほど超常識になったわけでもないだろう。
誰かに聞けばいいのだが、僕のまわりは「青少年支援者(カウンセラー・ソーシャルワーカー等)」ばかりで(本書に出てくる「支援社員」とは違います、この「青少年支援者」は同書のカテゴリー区分では「専門社員」に入る)、経営の素人度は僕と似たり寄ったり。だから、本書の三区分が現在の経営論においてどの程度常識になっているかどうかはわからない。
三区分は、以下にわかれる。

コア社員は、組織を機能させる中核社員。
専門社員は、専門性の高いプロ社員。
支援社員は、プロ社員を支え、ルーティンの仕事をこなす比較的低コストの社員。

これからは、正社員・非常勤社員の区別ではなく、この三区分で捉えられていくだろうと筆者は予測する。青少年支援NPOに喩えてみると、
コア社員……組織を機能させる(経営・事業を束ねる)少数の中核社員
専門社員……各事業において、青少年を実際に支援するプロカウンセラー・プロワーカー
支援社員……各事業現場で専門社員の指示のもと実際に青少年と関わったり、事務所でコア社員を補佐する現場に欠かせない社員

ベストセラー本で喩えてみると、『もしドラ』に出てくる野球監督は当然専門社員に入り、マネージャーの南ちゃんはこの偏屈者の監督をいかに部員の中に入り込ませるか知恵を絞る。
たとえば『9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方』は、支援社員への教育について書かれた本だ。ディズニーのような超サービス業では、支援社員の育て方ひとつで会社の成り立ちそのものが決定されるという重要な仕事となり、7割が第3次産業の我が国ではディズニーまでとは言わないまでもその方法論は汎用性をもつ。だから同書はベストセラーになった。

本書には詳しくは書かれていないが、コア・専門・支援は、すべてがいわゆる「正社員」ではないだろう。特に「専門」と「支援」は、現在いわれる「非常勤社員」がかなり含まれるはずだ。つまりは年金・健康保険の社会保険は自己責任型(国民年金・国民健康保険)になるということだ。だが、「専門」「支援」の中にも、従来いわれる正社員も含まれるだろう。
同じ支援社員でも社会保険の種類が違ったり、同じ専門社員でも社会保険の種類が違ってくる。
コア社員はほとんど全員が現在いわれる正社員とイコールだから、つまりは、「コア」「専門」「支援」の3タイプの社員と、「厚生年金」「国民年金」の2タイプの社会保険が混合する(我が国ではドラスティックな年金改革は無理という前提に立っている)。
図式的に示すと、こうなる。
◯コア/厚生年金
◯専門/厚生年金・専門/国民年金
◯支援/厚生年金・支援/国民年金

社会参加に困難さを抱える若者は、この区分の中では、とりあえず「支援/国民年金」に入ることを目指すのが現実的だろう(その場合は、「現場」体験を積むことが必要になる)。対人コミュニケーションが苦手な人の場合、専門/国民年金を目指していくことになる(その場合は専門知識が必要になる)。
いずれにしろコア社員は、ひきこもりだろうがひきこもり未体験だろうが、余程の幸運がないとこれからの日本では難しい。★