「自由」は癒しツールだが自立ツールではない 「変な大人」論②


■「普通」が拡大すると、「変」も拡大する

前回からブログトップページのレイアウトを変えてみたところ、フラットかつ容易に過去のブログにも辿りつけるせいか、妙に閲覧数が上がっている。
僕としては読みにくいことこのうえないトップページ(グーグルの「動的ビュー」というサービス)なのですぐに元に戻そうと思っていたのだが、もうしばらく様子をみることにする。

前回、「変な人」が傷ついた子ども・若者を癒すと書いた。そしてその「変」は、「自由」に結びついているのでは、というところで終わった。

「変」は、この超高度情報管理社会においては「自由」と結びついている、というのはそれほど説明は不要だろう。情報が隅々にまでいきとどき何もかも便利になった代償として、我々は以前よりもタテマエ上「普通さ」を求められる。
これは矛盾するようだけれども、人間とはこんなものなのかもしれない。誰にでも自分の情報が漏れるかもしれないという可能性が前提にある場合、タテマエ上、我々は「普通」であろうとする。

とりあえず「普通」であれば揉め事は起こらないから、まずは「普通」からスタートするというわけだ。
情報がツーツーの社会ではすべてがトラブルになる。そんなトラブル発生を防止するには、「普通」であることが何よりも重要になるからだ。

そうなると「普通」が拡大していき、それは「社会規範」も拡大していくということだから、そうした社会規範からはみ出る「自由」は「変」ということになる。

関係ないが、アートの島・直島にあるアート銭湯。
アートはあまりにビジネスに取り込まれ、もはや自由とは対局概念。


■不登校の増大

社会規範のない社会はない。だから、そこからはみ出る「自由」は、どんな社会にもある。言い換えると、どんな社会にも「変な人」はいるということだ。
そしてその変な人は、通常の社会では、単なる変な人として終わる。そこには癒しも何もないだろう。

だが、超高度情報管理社会において無数の情報で縛られた人々(つまり我々)の周辺では、情報とともに、無数の社会規範が散りばめられている。
残念なことに、情報の拡大と拡散は自由の拡大をもたらさなかった。我々は、情報の拡大と同時に起こるトラブルから逃れるため、より「普通」であることを選ぶことにしたようだ。

言い換えると、トラブル防止のために、我々は規範という自己規制を「普通の拡大」というかたちで具体化している。そのため、ものすご〜く息苦しく生きにくい社会が形成された。

そうなると、基本「普通」の社会が、まずここにあることになる。普通が(というか「大」普通といっていいほど極端に普通を求める雰囲気が)基本になる。これは、ものすご〜く、息苦しい。
その結果として、不登校数の増大とその持続を招くことになった。現代の子どもは、僕の子ども時代と比べても、はるかに「普通」を強いられていると思う。かわいそうなほど(ちなみに、たとえばアスペルガー症候群の一般化という現象も、この「普通」の拡大の副産物だ。「普通」の拡大はそこからはみ出る人々を「障害」のカテゴリーへと押しやってしまうということでもある)。

■現代の「自立支援」は、規範社会に慣れさせる技術

そんな窮屈な世の中だからこそ(繰り返すが、超高度情報管理者会が超窮屈社会を産んだのは皮肉だ)、「自由」は癒しになる。
だから、その「自由」を体現する「変な人」は、子ども・若者の癒しや救いになる。超高度情報管理社会でがんじがらめになった子ども・若者は、「変な人」と出会うことで、リラックスできる。
淡路プラッツの初代塾長の故・蓮井学さんもそうだったし、たぶん僕自身もそうだ。自由を体現する「変な人」は、存在するだけで傷ついた子ども・若者を癒す。

だが、「変な人」は、「自立支援」まで行なうことはできない。
現代の自立支援とは、いわば規範社会に子ども・若者を慣れさせる技術であると言い換えることもできる。だから、仕事をすることや学校に行く(いずれも現代の典型的社会規範)ことが「自立支援」の成功の典型例となる。

「変な人」は、社会規範から外れることがセールスポイントのため、社会規範に戻すことは定義上苦手だ。蓮井さんも僕もなぜできたかというと、結局ふたりとも規範人間だったのかな。いや、柔軟な人、とも言えるか(自立支援を望んだ若者が結局プラッツに集まった、とも言える)。

このように考えると、いわゆる「フリースクール」が自立支援に躊躇してしまうのもよくわかる。
つまり、フリースクールは、規範からこぼれた子ども・若者を癒すことは得意だが、規範に戻していくのは苦手な機関なのだ。
なぜなら、それは「フリー」だから。

時代は、フリースクールさえも自立支援に向かわせているのだろうか。そういえば最近のフリースクールの動きを僕は知らないなあ。また研究しようっと。★