「変な大人」論 ③〜不登校版スモールステップスケール〜


■不登校版スモールステップスケール

先週は金・土とセミナー講師の補助役をし、昨日は、横浜のニート支援「バイターン」で知られる石井正宏さん・関西カウンセリングセンター理事長・古今堂靖さんと「ビートルズカラオケ」を堪能した。
そのふたつ(講師とビートルズカラオケ)を通して、5/27「変な大人」が子どもを癒す、6/2「自由」は癒しツールだが自立ツールではないのふたつのブログで書いた「変な大人」理論にさらに確信を抱いたので、少し書いてみよう。

金・土のセミナーは、主として不登校を扱ったものだった。
不登校は今、虐待や貧困といった00年代以降顕著になった問題も混入し、より複雑化している。それを受けて淡路プラッツでは、不登校問題にあらためて取り組み、高校中退の問題にも具体的に事業展開していく予定だ(これに関しては新たに行政委託事業を取得したので、次回以降報告していく)。

そのような動きのなかで、僕が考えたこのスモールステップ支援スケールVer.1をもとに、「不登校版スモールステップスケール」をプラッツスタッフが作成してくれた。それを表にしてみるとこうなる。



家族関係
外出
キーパーソンとの出会い
生活体験/学習支援
学校復帰/進路決定
①完全ひきこもり
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②外出不可
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③外出可
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④コミュニケーション訓練
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⑤学校復帰準備
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⑥学校復帰/進路決定





元のスケールより、こちらの不登校版のほうがステップ数を絞り込んでいるため見やすく、またステップの中で最重要となる「キーパーソンとの出会い」を表に明記しているため、支援の意味を捉えやすい。

ここでいわれる「キーパソン」とは、僕がブログで書いた「変な大人」のことで、①〜③までのひきこもり状態を脱するためには欠かせない存在だともいえる。
家族関係と外出が可能になったあと、この変な大人との出会いを通過し、子ども/若者たちは再び学校/社会に還っていく。

■フツーが「変な大人」には通用しない

「変な大人」は子どもたちにとって普遍の存在ではなく、あくまでも一時的「癒し」の存在だ。

社会規範からある程度自由な「変な大人」は、社会規範や制度にがんじがらめになったこどもたちを、その存在のみで癒すことができる。
変な大人は、言葉で「学校なんて行かなくてもいい」と言うこともあるかもしれないが、もっと根源的な部分で社会規範から自由になっている。ここでいう社会規範とは、たとえば「学校」「就職」「結婚」「育児」等の、フツーの社会では「当たり前」のことだ。

変な大人は「コミュニケーション」規範からも自由だ。「友だちを大切に」「恋人をつくれ」等のフツーの格言が変な大人には通用しない。「友だちなんて別にいらない」「恋人なんて近代社会が捏造した幻想」など、変な大人は平気で言う。
このふたつの言葉(友だち・恋人)はいずれも僕の日常語だが、このような価値を日常の中で当たり前のように差し込む大人は、現代の監視社会ではほとんどいない。

■魔法を使う変な大人

ポイントは、子どもたちの中にもこのような社会規範やコミュニケーション規範がしっかり根付いているということだ。
で、子どもたちは、変な大人のように、完全にそうした規範から飛び出る気もない。子どもたちは、やがてはそのような規範の中に戻っていく。もっと言うと、子どもたち・若者たち自身、いつかは「こちら側(変な大人の側ではなく、フツーの世界=規範的マジョリティの側)」に戻りたいと思っている。

ただ、現在は、そうした規範が子どもには過剰すぎて適応できないだけなのだ。
子どもたちはいつかは元の世界に戻って行きたい。けれども今はどうしても身体が動かない。そのため、元の社会に適応できない。

そんなとき、「変な大人」は魔法のように子どもたちをリラックスさせることができる。嵐の中、一時的に寄港できる港のように、子どもたちには楽な存在として変な大人は目の前に現れる。
だが、いつかは(数ヶ月〜2年程度)その変な大人から子どもたちは離れる。そして、変な大人の世界でバージョンアップした子どもたち自身の身体と心をひっさげて元の世界に戻る。

これが、上の表では学校復帰と呼ばれ、広くは「自立(への第一歩)」と呼ばれる現象だ。★

暗い部屋の中、ビートルズで盛り上がる変な大人3人(左から古今堂・石井・田中)