①目の前の課題解決型、②社会起業家型、③社会変革型、④仕方なく型〜4つのNPOタイプ 


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■4タイプのNPO

本文とは関係ないが、古市憲寿著『僕達の前途』(講談社)。
特に最初の数章は、これからの日本の組織のあり方を提示する。
著者の意図とは少しズレてるかもしれないが。
ここ2回、officeドーナツトークのミッションと行動指針を取り上げてきたが、その路線は少し一服し、最近久しぶりに「ソーシャルセクター」について考えたことがあったので、今回は簡潔にまとめることにする。

それは、現代日本のNPOをはじめとするソーシャルセクターには、以下の4種類があるのでは、という分類と問題提起だ。
それらをさっくり並べてみよう。

①目の前の課題解決型/行政の補完型/準ファーストセクター型
②社会起業家型 /準セカンドセクター型
③社会変革型/サードセクター型
④仕方なくソーシャルセクター型

■①のNPO〜目の前の課題を解決するためにNPOになった

NPOのPはprofit(営利)であって、non-profitとは文字通り非営利を指す。非営利の代表的サービスは、当然「行政」サービスということになる。
少し前、当ブログのこの記事(PとG〜アメリカ型とヨーロッパ型)でも言及したように、NPOは基本的にアメリカ中心で広がっていった組織形態であり、州によって行政サービスがまばらなアメリカならではの、民間サービスの力で行政を補完せざるをえないシステムだ。

文献を読み込んでいないので間違っているかもしれないけど、僕の今のところの直感では、元々NPOには、行政ではカバーできない非営利的なサービスを市民からの(税ではなく)寄付によってまかなう、という意味があると個人的には結論づけている。

これが「準ファーストセクター」型の意味だが、これにプラス、「目の前の課題を解決するために勢いでNPOになった」組織という意味合いが現代日本のNPOには含まれる。

ひきこもりやニートの問題に例をとると、目の前で困っているひきこもりの若者とその保護者がいて、その問題を支援し解決したいという人が現れた時、最初は個人の力で支援施設的なもの(「居場所」や就労支援等)を開設してボランティア的サービスを提供するのだが、徐々にニーズが増えてくる。

その支援施設的なものに、「自分も支援側に加わりたい」という人も加わり、一定の組織になってくる。
その際、「ここまできたんだからNPOでもとっちゃいましょうよ」的声が内部から上がり、代表的な人々のもとで法人設立の手続きがすすめられ、半年後、無事NPOになる。

で、自主事業に加えて、周囲からすすめられるままに委託事業や補助金取得なども行ない、やがてはさらに大きな行政の事業を委託・補完するようになり……と、「気づけばソーシャルセクター」なNPOは、日本には結構な数があると僕は読んでいる。

このタイプは、目の前の課題(例でいうとひきこもり)が何らかの解決ベースに乗り始めた時、組織自体の存続理由を失ってしまう。
大きなミッション(超少子高齢社会の解決等)が最初からあれば問題ないが(その大きなミッションのために次の課題〜たとえば「団塊世代を活用したサービス組織化」等に向かう)、その組織は迷走し始める。

だから、さらに行政の補完機関(下請けですね)となっていき、ミッションがブレたまま、組織が振り回される。
たとえば、今年以降起こる「下請け」要請の代表的テーマは、おそらく「生活保護」がらみの事業なのでは、と僕は予想しており、多くのNPOが見よう見まねでその要請に応えていこうとするだろう。

■企業家なのに「寄付」

①だけで書きすぎてしまったが、まあ①の問題がいまの日本のNPOの問題の多くを占めると思われるため、ま、いいか。
①の方々、気をつけてくださいね〜

②は、いま勢いのあるNPOはだいたいこのタイプだ。おもしろいのは、このタイプのリーダーに、日本の「寄付」文化の再考を促す提案をする人がいるということだ。
上でも書いたように、本来は、行政の下請け機関から抜け出すためにも、①のタイプのNPOが中心となってNPO財政基盤の再検討をすすめ、その第一の方策に「寄付」があげられてもいいと思う。

が、実際は、この②のリーダーたちが日本文化の変更という壮大な展望を背景にして、寄付文化について問いかけている。やはりチャレンジスピリットをもった方たちだ。
僕は日本ではなかなか寄付文化は定着しないという考えだが、こうした試みは非常に尊敬している。

でも本来は、起業家=企業家的なこの②のリーダーが理念的に発信するのではなく(日本では「理念」の影響力が残念ながら弱い)、①のNPOたちが、行政の下請け機関からの脱出を求めて自主的に「損得」の観点から(日本は損得の観点は受け入れやすいと思う)訴えていってほしいものだ。
日本に47,000ある(らしい!!)NPOの数としても、②は目立つけれども圧倒的少数派だと思われ、やはり大多数は①か④(これが最大派閥?)だろう。これらのグループがもっと主体的に寄付文化を考えていってほしいものだ。

あと、②のNPOは、団体規模の拡大とともに、リーダーの才覚(あるいは遠大な個人的ミッション)がそのNPOのミッションを超えてしまうという、いいことか危険なことかわからない事態も待ち受けている。
そのとき、リーダーは、これまでの自分の組織中心で動くか、さらに自分の企業家スピリットを展開していくかが問われる。経営とは究極的には「組織と戦略」だといろいろな本に書かれているが、まさに、NPOの器をリーダー(たち中心メンバー)が上回った時、新たな「組織と戦略」が求められるのだ。NPOは生き物ですね。

■③は存在せず、④こそ大多数

③は現在あまりない(と思う)。その、どうしようもない事実を、おそらくみんな気づいているけれども誰も指摘しない。このブログでも継続課題にしていこう。

④は、①のウラタイプといってもよく、①になりきれなかった大部分のNPO(つまりは47,000団体のうちの80%ほど〜ということは、38,000も?)がここに属すると思う。
主体性もあり課題解決志向はあるが、そのことが社会貢献とはつながっていないタイプ。

要は、70年代の「市民運動型」組織といってもいいかもしれない。
このアマチュアくささの中にこそ「社会貢献」の真髄が含まれており、①も②も時々忘れてしまう「思い」をたくさんもっている。
が、組織や戦略よりも「思い」中心のため、経営的+組織存続的にいくつもの課題を抱えている。

日本の社会貢献は、まだまだ緒についたばかりなのだ。

う〜ん、こんな短いスペースでは書ききれない。これら①〜④についてはさらに検討していきます。★