「脱タコツボ」が、やっとできそう


■丸山真男とマトゥラーナ/ヴァレラ

この2週間は3年前の脳出血で倒れる前くらいまでとはいかないが、夜の宴会系は一切ないものの、昼間だけ見るとむしろ3年前よりも忙しくなってきて微妙にヤバい。
だから休める仕事から休んでいくとなると、当ブログはその第一候補になるため、2週間更新を自粛してきた。

が、元々こうした気軽なエッセイは趣味だから、実は書きたくてうずうずしていたのだ。で今日は、久しぶりの「自団体(ドーナツトーク)だけで過ごせる」1日だから、書いてみることにする。

今回のテーマは、「脱タコツボ」と、それを可能にするための「組織の3オーダーの分析」だ。


いまだその思想は衰えず。この本をバイブルにしている人も多いだろう。


53年前に丸山真男が『日本の思想』(岩波新書)で日本のタコツボ社会(組織の大小に関わらず日本では「内/外」の区別を明確に行ない、これが社会の硬直化を生む)に苦言を呈し、僕はそれを20代で読んで以来ずっと「脱タコツボ」を目指してきたが、ここのところやっと可能性が見えてきた。


阪大「臨床哲学」では主としてドゥルーズ等のフランス哲学を学んだが、ついでに読んだこの本は今も大いに役立っている。


組織の3オーダーについては、こんなこと。
マトゥラーナとヴァレラが『知恵の樹』(ちくま学芸文庫)で提示した、生物界の階層の3オーダー(細胞レベル・個体レベル・社会組織レベル)は、いろいろ応用が効き、システム論の専門家には怒られるかもしれないが、僕は、ソーシャルセクター(あるいは組織全般)が行なう仕事の3オーダー(現場・事業マネジメント・法人マネジメント)にも適用可能ではないかと思っている。

そして、そのように組織で行なう仕事を分析することが、上の「脱タコツボ」を現実化するためにはわりと役立つと考えている。

■組織の3階層

子ども若者支援ソーシャルセクターの業務においては、以下の3オーダー(階層)が同時進行している。

それは、①現場支援、②事業マネジメント、③法人マネジメントの3オーダーだ。
支援者は若手も含めて①が業務のほとんどだと思い込んでいるかもしれないが、事業を運営する②のレベルがおろそかになると、一気に事業全体がバラバラになる。

たとえば僕がいろいろなかたちで関与する「高校中退・不登校フォローアップ事業」においては、高校生が放課後や昼休みに訪れる◯◯カフェ(となりカフェ・かめカフェ・めいぷるカフェ等)で、高校生はどのような状態なのかを把握しどのような支援を行なうかを検討することが①のレベルになる。
これを吟味して昇華していくことが、支援レベルの向上につながる。

しかし、こうした①レベルが機能するためには、「組織」をつくらなければいけない。
生徒たちと関わるスタッフが2〜3名、それを統括するコーディネーターが1名、これで1支援ユニットとなる。
◯◯カフェを仮に2つ運営するのであれば、2ユニットが必要になり、この2ユニットをさらに統括する「事業責任者」が必要になる。

僕は、この事業責任者を事業マネージャーと呼んだほうがわかりやすいと思っている。
事業マネージャーはこうした組織運営の他に、事業戦略と単年度内アクションプランの設計と執行を行なう。
この「アクション」には、行事、それを裏付ける会計事務とのすり合わせ、広報、スタッフ管理等々が含まれ、これに加えて次年度の事業計画も加わる。

それらすべてで事業マネジメントだ(このあたり、11/9土曜日に、大阪ボランティア協会において「事業マネジメントのベースメント」という勉強会を行なう予定です。興味ある方はこのFacebookイベントページ参照事業マネジメントのベースメント〜ビジョン・ミッション・戦略〜

■タコツボは常に待ち受けている

法人マネジメントは、以上のような事業を集積したうえで、法人全体のビジョンや戦略を検討し、財務・マーケティング(広義の広報)・アドボカシー(利用者の代弁と事業獲得)等を行なう。

まあ書き始めたらきりがないのでやめておくが、僕が興味があるのは、こうして現場支援から法人マネジメントにいたるあちこちに、いかに配慮しようが「タコツボ」化の罠がぽっかり口を開けており、日々の仕事に懸命になればなるほど、そうした組織体(現場から個別事業、そしてそれらを束ねる法人組織)すべてにわたって「タコツボ」が待ち受けているということだ。
だから普通は、自分のタコツボを愛し、美しいタコツボを形成しようと努力する。

それに反対するわけではないものの、その発想でいる限りは、美しいタコツボはつくられるかもしれないものの、残念ながら脱タコツボは不可能になる。
つまり、事業と法人は美しくなるものの、同時にタコツボ化することで、組織や事業の硬直化が進むということだ。

■組織の硬直化(タコツボ化)を防ぐために

その脱タコツボ化・硬直化阻止に向けての突破口は、あるキーパーソンによる「ウチ/ソト」の境界線を常に引き直す動き方だと思うようになってきた。

先日、某巨大NPOの某スタッフに、「田中さんはまるでうちのスタッフですね!!」と笑われてしまった。
また同時に他のスタッフには、「うちのスタッフとは全然違うし、田中さんのあり方がよくわらない」とも言われた。
それもまさに僕の狙い通りだった。

まあこれはコンサルティングとしてのひとつの動き方の事例だが、これは、一組織体の中にも応用可能のように思えている。
ポイントは、組織化は必要だし組織化がないとよい事業は生まれないものの、同時に生じている硬直化を防ぐために、ウチ/ソト関係なく動き続ける人間を一人置くことのように思えてきた。

今回はここまで。今回は、マネジメントと社会の3オーダーの考察は、「タコツボ」社会の考察ともつながっていることをお伝えしたかった。★