「ソーシャル・アントレプレナー型社会変革タイプ」とは何か〜「ビジョン→ミッション→戦略」という流れに忠実に


■「行政補完タイプ」に修正

前回、早稲田大学で行なった講義の簡単な報告ブログを書いたが(早稲田大学にサードプレイスを)、そのなかで、あらためて「ソーシャルセクター」について言及してみた。
その作業を通じて、以前から課題だったソーシャルセクター分類(ソーシャルセクターの2分類4タイプ)のうち、「ソーシャル・アントレプレナー型・社会変革タイプ」について、その特徴が明確化できたので、ここに簡単にメモしておく。

その前に、上ソーシャルセクターの分類について少し修正したので訂正・記述しておく。
前回の分類中、「目の前の課題解決型・委託事業タイプ」を「行政補完タイプ」に訂正する。

委託事業は、目の前の課題解決型だろうがソーシャル・アントレプレナー型だろうが利用している。
委託事業を行なう際、以下に記すビジョンほかに則っているかどうかが両者を区別する基準になり、委託事業はそのための手段となる。

言い換えると、ソーシャル・アントレプレナー型のうち社会変革タイプは、委託事業はミッション貫徹のための「手段」にすぎないが、その他のタイプ(目の前の課題解決型2タイプとソーシャル・アントレプレナー型ベンチャータイプ)は「目的」となってしまうということだ。

分類に「委託事業」をもってくるとややこしくなるため、団体存続のために行政事業に依存せざるをえないという意味を込めて「行政補完タイプ」に言い換える。
早稲田での板書を貼り付けてみる。


ソーシャルセクターをビジネス(事業)型とボランタリー型に大別するところから始まる。
また板書中「社会企業家」は「社会起業家」の間違い



■「理念」が苦手で、「戦略」が不要だった国、日本

これまでの課題は、以上のような分類はだいたい終わっていたものの、表中の「ソーシャル・アントレプレナー型・社会変革タイプ」をきちんと定義していなかったことだ。
今回、これをようやく説明できるようになった。ただ、まだ確定ではない。

理想のソーシャルセクターは当然この「ソーシャルアントレプレナー型・社会変革タイプ」だ。
このタイプの特徴は、「ビジョン→ミッション→行動指針→戦略」という教科書的企業づくりに則っているかどうか、という単純な指標に行き着く。

ビジョン(どういう社会にしたいか)、ミッション(そのための理念)、行動指針(ミッションの補足・下位概念)、戦略(法人戦略→各事業戦略→機能別〈人事・広報・企画等〉戦略)という流れは、どの企業・団体・ソーシャルセクターもできているかといえばそうではなさそうだ。

理念が苦手で、歴史的に「戦略」が不要だった(ヨーロッパ・中国のように恒常的に戦争がない〜内戦では100年程度の戦国時代、対外戦争では明治後半以降の50年ほど)日本においては、そのような慣習が各組織にないとよくいわれる。

グローバリゼーションの時代になり、大企業やグローバル企業中心に、「ミッションと戦略」をコンサル会社の手を借りて強引に導入しているようだが、それは企業内の英語使用といった相変わらずの「小手先」というか小器用な手法のみ注目され、「ブレない理念と、数年単位の戦略」という発想は根付くのにはまだ時間を要するだろう(対外的に隠蔽する悪習もある)。

各「現場」の各々の「技法」がものすごく好きな国民性を日々観察していると、ミッションと戦略には程遠いと僕は毎日実感するのだが、いかがだろうか。

■「おいしく」ても行なわない

が、そんな我が国ではあるものの、ソーシャルセクターの仕事をきちんと貫徹しようとすると、おのずと「ビジョン→ミッション→行動指針(この前後に「アイデンティティ」を入れる場合もあるという)→戦略」という流れに忠実であることが求められる。

自分の団体にとって、どのような社会が理想か(ビジョン)、その社会を実現するためにどのような理念が必要か(ミッション)、そのミッションを補足するためにどのような概念が必要か(行動指針)、そのためにどのような戦略が組織内の各レベル(法人・事業・機能別)で必要かを、組織の中心メンバーが常に創設・確認していく。

そしてこれに則った行動を現実化する。
ここからはみ出るような事業は、多少それが「おいしく」ても(予算が膨大であっても)、行なわない。

この「行なわない」という決断は、案外難しい。特に、社会問題の解決にお金(予算)が動くようになり、そのために官僚の方が必死に企画するようになると、どうしてもその予算規模や官僚の熱情に動かされてしまう。

ビジョン・ミッション・行動指針・戦略からブレない、ということだけを守ることが、同語反復ではあるが、そのビジョンにより近づくことになる。
こうした団体が、規模の大小にかかわらず、つまりは「ソーシャル・アントレプレナー型・社会変革タイプ」だ。
ドーナツトークも当然ここを目指したい。

下に早稲田の板書を貼りつけておく。★