「黒田官兵衛」はソーシャルセクターにこそ必要〜NPO参謀論①


なぜか、ダウンタウンまっちゃんはクロカン好きらしい。
youtubeでも話題になっている。



■「中国大返し」までは

NHKの大河ドラマ「黒田官兵衛」は、組織の「参謀」を描くドラマだと思うので、ちょっと期待して見始めた。
岡田准一のかっこよさばかりに見とれていて、まだ「参謀劇」は出現していないが、明智光秀討伐を秀吉に進言して「中国大返し」を成功させるところあたりまでは追っかけようかなと思っている。

この頃僕は、「高校生居場所カフェ」事業(大阪府立西成高校以外にも、箕面東高校・桃谷高校、その他「居場所カフェキャラバン」でお世話になる5校などhttps://www.facebook.com/pages/高校生居場所カフェプロジェクト/580149065383345)において、日々高校生たちと「サードプレイス」スタッフらしいトークを繰り広げているのだが、一方では行政機関やNPOなどのソーシャルセクターへの「コンサルティング」的仕事もしている。

そのなかで、ソーシャルセクターにおける組織のあり方を一般化しておくことが必要だと痛感するようになった。
特に、黒田官兵衛的「参謀」を組織のどこにおくか、ということが、通常の会社だけではなく、いや「社会貢献」という目に見えないものを中心にするソーシャルセクターだからこそ、決断役の「リーダー」を補佐する「参謀」役の必要性を感じる。

■ソーシャルセクターの組織

NPO等のソーシャルセクターは、基本的に「事業」から成り立っている。
が、その事業をさらに細かく見ていくと、数名の現場支援スタッフと1人のリーダーからなる「班」や「チーム」、その呼び方はなんでもいいが、数名のユニットが基本細胞として組織される。
この基本ユニットが、ソーシャルセクターの最小単位になる。

それら基本ユニットがいくつか集まったものが「事業」になる。
事業によっては、いくつものユニットで組織されるものもあるし、ひとつのユニットだけのものもある。

また、その基本ユニットは「事業」には入らず、「機能別組織」たとえば「財務」「総務」「人事」「広報」「企画」といった部署の名で呼ばれることもあるだろう。
どちらにしろ基本ユニットは2〜5名程度でおさまると思う。

ただし、機能別組織をつくらざるをえないほど大きくなっているソーシャルセクターのほうが今のところは少ない。
ほとんどのNPO等のソーシャルセクターは、数名の基本ユニット(これは「目の前の課題解決型・自主事業タイプ」と重なる)だけで完結するか、いくつかの基本ユニットを持ってはいても事業は2つ程度の規模だろう。

そして、機能別組織で行なう財務・人事・広報等は、代表を含む数名で「兼務」しているはずだ。
以上を簡単な図に書いてみる。

代表(法人マネージャー=法人の意思決定機関)─機能別組織(財務・人事・広報等)
   丨
 A事業(事業マネージャー=事業統括責任者)・B事業・C事業……
   丨
 a.ユニット(ユニットマネージャー=各現場責任者),bユニット……
   丨
 a'.現場スタッフ(2〜5名程度),b'.現場スタッフ……

■戦略もレベル別に

「戦略」に関していうと、法人マネージャーは法人戦略(事業の配置の決定)を担当し、機能別組織のたとえば財務マネージャーは法人全体の財務戦略(法人全体の数年単位の財務見通し・目標・資金調達戦略等〜この下に通常人々が財務と捉えている「会計事務」がぶら下がる)を担当し、事業マネージャーは担当事業の「現状把握・目標設定・競争戦略等」を担当する。

戦略の上位概念である「ビジョン・ミッション・行動指針」は、通常は、代表ほか数名の「法人マネジメント部」(この単位のメンバーを「部長」とするところもある)で決定していく。

さて、以上は単に教科書的に書いたもので、実際にこの通りに動いているソーシャルセクターは日本には30もないと思う(NPOは47,000ある)。
それら一部のソーシャルセクターはたとえば慶応SFCや立命館APU出身の人々で占められており、いわばソーシャルセクター理論を徹底的に学んだ組織でもある。

ポイントは4つある。それらは、
①こうしたソーシャルセクター組織論どおりには実践化されておらず、マネジメントは行き当たりばったりの組織が多いということ
②こうしたソーシャルセクターの理論が実践家達によってまだまだ「オープン」「共有化」されていないということ
③組織や財務等の「形態」からソーシャルセクターを捉える議論と、事業の中身とその組み合わせ・ミッションのラディカルさ等の「中身」からソーシャルセクターを捉える議論があるということ(前者が「ソーシャル・アントレプレナー型ベンチャータイプ、後者が「ソーシャル・アントレプレナー型社会変革タイプ」)
④そして、①〜③の議論の中に、まだ「参謀」役(セクション)が明確に位置づけられていないということ

■参謀は「考案者」、代表は「決定者」

ありゃ、黒田官兵衛に入る前のところで、結構文量を書いてしまった。
組織の「参謀」の位置づけは、たぶん通常の会社組織においてもきちんと行なわれていない。
それは、ホンダ創業者の参謀役や、伊藤忠商事の参謀等、数々の伝説として伝わるものの、それら「参謀」セクションが組織内でどういう必要性からどういう役割を果たしているのかはまだ明確化されていないのではないか。

僕が思うには、参謀とは、「その組織で行なう重要事項を考案する者」だ。それはいわば「考案者」だ。
逆に、代表・リーダーとは、それら考案したものを元に実際「何を行なうかを決定する者」、つまり「決定者」だ。

組織は、この二者が両立して初めて、二者以上の力が生まれると思う。ここが、僕が「フリーの単独者で動くこと」を選んでいない唯一の理由でもある。
代表と参謀が「考案→決定」していくと、1人で「考案・決定」するよりも、なぜか何倍もおもしろいムーブメントとなってそれは発動するのだ。

これに、二者を支える下部単位のマネージャー(事業マネージャー)がいれば、さらにムーブメントは大きくなる。
この「組織化の謎」を解いていく際、「参謀」を考えることがその解に直結すると僕は思う。このテーマは不定期で続けます。★