NPOでは食えるが、貧困だ


■働き盛りになる30代半ば以降の不安定さ

一時、NPOでも食べていけるという議論が盛り上がったことがあったが、あれは確かに事実ではある。

が、不安定だ。NPO(特定非営利活動法人や一般社団法人等)では工夫すると食べてはいける。5万ある特定非営利活動法人のなかで「事業型」(ボランティアではなく1名以上が有給)は1万ほどだと言われており、この1万の代表理事ほか職員たちは食べていけている。

4万の特定非営利活動法人は食べていけていない。だが1万は食べていけている。

この1万法人はNPOで食っていけている、というのが、マジックである。
なかには、「認定」を取得した優良NPOもあり、そうしたNPOは広報上手でもあるから、ソーシャルグッド/社会貢献で食べていける時代になったと宣伝する。

特に、大学生たちに宣伝する。
だから、意識高い系の大学生は、そうしたソーシャルな大規模NPOに関心を寄せ、なかには職員化していく人もいる。

そして、実際に食べてはいける。
が、その「昇給ライン」はどんなカーブを描いているだろうか。また、毎年2回のボーナスは支給されるだろうか。

よほどの大手NPOでない限り(いや、大手NPOでも)、一般企業との差は激しいだろう。
特に、働き盛りになる30代半ば以降、そのカーブのゆるさ、不安定さに、人々は不安を抱くはずだ。

言い換えると、いまのNPO職員の待遇のままでは、これから家を買おう、子どもを私立の学校に行かせようとなった頃、圧倒的に資金不足になるのではないだろうか。

■夢見る大学生たちがかわいそう

実際僕は、30代前半から半ばにかけてやめていったNPO系の職員を何人か知っている。

その人たちはいかにも悔しそうだった。ソーシャルグッドにかける思いは今もある。が、30代になり、現実がその夢を許さなくなった。NPOのその年収では、やっていけないのだ。

弱小NPOのひとつであるofficeドーナツトークでは、一昨年はボーナスを出せたが(年1回)、昨年度はわずかな寸志しか出せなかった。スタッフの2人には悪いけれども、それが実状である。

ヘボ経営者の僕より、有力NPOはスタッフたちの待遇をより考えていることだろう。けれども、不安定な自主事業(福祉系除く←が、この場合NPOである必要はない)と行政委託と寄付しか財源がない現在のNPOにおいて、そもそも数十人の職員を雇用することに無理がある。

特定非営利活動法人ははじめから資本主義的には破綻している。それは、「静岡方式」のようなボランティア前提型の組織形態なのだ。

そこをそろそろ、おしゃれNPO経営者、団塊ジュニア経営者は引受け表明するときが来ているのではないだろうか。

あるいは、全国的に見てもおそらく数十しかない一部成功事例はまったく参考にならず一般化できないことを(誰でも「食える」わけではないことを)、成功者が語るときが来ているのではないだろうか。



そうでないと、夢見る大学生たちがかわいそうだ😊



講演依頼も絶えないが不安定