マラソンはロックミュージックではない〜マラソンと社会変革の違和感


■ソーシャルセクターと「マラソン」問題

僕はいま徳島自宅でのんびりと過ごしており、日・月は基本「書かずに休む」ことにしているのだが、今日、某お友達からまたソーシャルセクター新情報が綴られてきたので、Facebookタイムラインにメモくらいはしておくかと思ったものの、いや、短くてもいいからここはこの「現象」をリアルタイムで原稿化しておいたほうがいいと思ったので、グーグルブログしてみる(このテーマはYahoo!では難しい)。

つまりは、例の、ソーシャルセクターと、

「マラソン」

問題、だ。
なぜソーシャルセクター/ベンチャーは「マラソン」で寄付を集めようとするのか。寄付なら、キャンプファイア等の民間ファンドも普通だし、独自にクラウドファンディングや既成金融機関を通しての寄付を求めてもいいし、従来の「赤い羽根」「日赤」「NHK」の三大寄付窓口を利用すればいい(三大寄付窓口では自分の法人に寄付資金は流れないか)。

僕はちなみに、超わずかではあるが、赤い羽根基金の西日本水害寄付窓口に先日寄付した。「劣化」NPOに寄付する気にもなれず、クラファンNPOは芸能人活動などとの境界がわかりにくいため、やはり赤い羽根らが2.0化するほうがまだマシだと思うからだ。

■その概念に殺された音楽家も何人もいる

東京マラソンや大阪マラソンのHPをさらっと見てみると、どうやら「チャリティーランナー」という枠組みが現在一般化しており、大手マラソンの中にはこのチャリティーランナー受付窓口があるようだ。

ソーシャルセクター/ベンチャーの方々は、こうしたチャリティーランナーという枠組みで寄付を募っているとのこと。「走ることで市民からソーシャル活動に対して資金を募る」、これもまた社会的インパクト投資の具体形なのだろうが、それにしても、「なぜマラソン?」という疑問はずっとずっと残る。

バンドエイド等のチャリティイベントが常態化しているロック業界では(アメリカでは街の音楽イベントに寄付を絡ませるのは日常的とのこと)、チャリティとはダイレクトに親和性がある。

それはとにかく、ロックが「ことば」を扱うジャンルだからだ。ジョンレノンを持ち出さずとも、ロックと平和とラブは、ロックミュージックがジャンルとして固定された60年前から不変だ。

ラブ&ピースがどれほど非現実で陳腐な概念だったとしても、その「概念」に殺された(命を落とした)音楽家も何人もいるし、そのラブ&ピースの夢を人が抱き続けているからこそ、人々はジョンレノンからベビーメタルまで支持する(ベビーメタルの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」はどれほど広告戦略色が強くとも、現代の閉塞社会内では立派なラブ&ピースだ)。

ロックはつまり、そのジャンルの存在そのものが、「社会変革」と直接つながってきたジャンルだ。

■「フジロックとソーシャルセクター」のほうが明瞭

けれどもマラソンは、社会変革とはつながっていない。

僕は、若い頃からマラソンというジャンルのファンで、古くは中山のやんちゃさ、少し前は増田明美の鮮やかな解説者転身や谷口の「ころんじゃった」事件、シドニーの高橋サングラス捨てた瞬間スイッチ入ったかっこよさ等、最近ではそれほど密には追っかけていないが、あの2時間10分というレース時間をものすごく楽しんで見ることのできる者の一人として自負している。

あのジャンルには、せいぜい中山的体制(マラソン連盟)との距離のとり方はあるものの、谷口にしろ高橋にしろ基本「己との闘い」であり、同じ己との闘いではあっても、ジョンレノンの咆哮が即反対性とつながるような、ジミヘンのワンフレーズがアメリカ社会に問いかけたようなインパクトをもった「表現」はそこにはない。

長い長い距離を、自分の息遣いと心臓音と全身の筋肉と会話しながら一歩一歩推し進め、同じく自らと闘いつつ走っている競争者たちを意識しながら、身体の限界を突破していく。
あの究極の42キロの闘いに「社会」はなく、「自己」があるのみだ。

つまり、マラソンというジャンルに「社会」やそれに疑問を抱く「社会変革」等の意味はほぼ入らない。
「社会」とは対極の、「自己」との闘いが主テーマであり、ここに「社会」はほぼ入らないのではないか。

あまりに、マラソンと社会変革が僕にはピンとこず、それをくっつけようとする各主要マラソン大会、そしてそこにノッてしまうソーシャルセクター/ベンチャー業界がさらにピンとこなかったので、クソ真面目すぎると自分で思いながら、「概念」としてマラソンと社会を考えてみた。

なんにでも乗っていくのは、逆効果で、こうなってくると、NPO内で「ウッドストック」するほうが王道のようにも思える。あるいは、「フジロック・フェスティバル」にソーシャルセクターがさらに噛んでいく(NPOパノラマの石井さんは今年も実践中!)ことのほうが断然ポジティブだ😊

パワートゥーザピープル!